個人破産申請書類の重要性
個人破産を申請する際、多くの人が最も頭を悩ませるのが「申立書の作成」です。書類の中には形式が決まっているものもありますが、申立書は「自由に書いてください」という言葉に戸惑ってしまうことが少なくありません。しかし、心配は不要です。申立書はありのままを正直に記載し、いくつかの重要なポイントを守るだけで十分です。
申立書が重要な理由
申立書は、裁判所が「申請者の人間性」を確認できる唯一の機会です。破産申請者が単に経済的に困難な状態なのか、またはギャンブルや詐欺などで故意に債務を作ったのかを判断する基準となります。また、申立書の内容が不誠実だったり、前後のつじつまが合わなかったりすると、裁判所が免責をためらう可能性があります。書類は完璧に準備したのに、申立書が不十分で補正命令を受けたり、却下される場合もあるのです。
重要項目を見逃さないこと
申立書を作成する際、多くの方が見落としがちな項目があります。単に債務の経緯を記載するだけでなく、裁判所が必ず知りたい事項を含める必要があります。以下は必ず記載すべき項目です。
過去の申請履歴
申請者が以前に破産や個人再生の手続きを利用した経験があるかどうかは、裁判所が最初に確認する事項の一つです。これは単なる関心ではなく、法律上の要件と直結する問題だからです。過去に破産を通じて免責を受けた場合、その後7年が経過していないと再度破産を申請できません。また、個人再生で免責を受けた場合、最低5年が経過していないと破産申請はできません。これを判断するために、申請者が過去にどのような手続きを経てきたのかを必ず明記する必要があります。また、過去に手続きを申請したが「免責不許可」とされたり、途中で放棄したケースも記載する必要があります。漏れていると裁判所の調査で明らかになり、虚偽記載と見なされ、不利益を被る可能性があります。
債務の道徳的原因
裁判所は、申請者の経済状態だけでなく、債務発生の道徳的な原因も確認します。つまり、「錯誤ややむを得ない事情による債務なのか」、または「無責任で故意の行動による債務なのか」を申立書を通じて判断しようとします。過去に詐欺罪で刑事罰を受けたことがある場合や、ギャンブルで債務が増えた場合、または過度の浪費性支出が繰り返された場合には必ず言及する必要があります。特にこれらの理由は法的に免責不許可事由と見なされる可能性があるため、申立書でこれを隠したり縮小したりすると、むしろ信頼を失うことになります。しかし、無条件で免責が拒否されるわけではありません。重要なのは反省と改善の意思です。
債権者との交渉経験
債務を返済しようと努力したかどうかは、裁判所が申請者の誠実さを判断する基準になります。例えば、債務者が債権者と返済条件を協議しようとしたり、債権者の取り立てに応じるために法的手続きを調べたりした経験は、むしろ肯定的に評価されます。また、過去に債権者によって訴訟を起こされた経験、強制執行、仮差押え・仮処分などの措置を受けた経験がある場合は必ず含める必要があります。これらの情報はすでに裁判所が調査できるため、隠すよりも明確に示す方がむしろ有利です。
家族情報の重要性
申立書の最後に必ず含めるべき部分が家族情報です。単に「家族がいます」ではなく、配偶者や子供が一緒に破産を申請するか、未成年の子供がいるか、誰が誰を扶養しているか、家族の収入があるかなどを含める必要があります。特に、配偶者の収入がどの程度か、申請者の収入がなくても家族から支援を受けているかどうかは、生計費算定と免責判断に直結するため、申立書で具体的に示す必要があります。
申立書の具体的な作成方法
申立書は法的文書でありながら、同時に個人の告白でもあります。そのため、単に「うまく書こう」という考えよりも、「あるがままを、整理された流れで伝えよう」という姿勢が最も重要です。
流れのある段落構成
申立書は通常、次のような順序で構成すると読む人が理解しやすく、判断も明確になります。
- 債務が生じたきっかけ
- 返済しようとした過程
- 今まで対処が困難になった理由
- 現在の経済状況
- 家族、扶養状況などの付随要因
- 最後に破産を申請することにした決意と誓い
この流れに従って段落を分けると、文章が多少不十分でも十分に説得力を持って読まれるようになります。
具体的な事実の記載
漠然とした表現は、裁判所の信頼を損ねる可能性があります。例えば、「何年か前」、「多額の金」、「ずっと苦しかった」という言葉よりも、正確な数値や時期を提示する方がはるかに良いです。
責任回避より反省と受容を強調
裁判所は申請者の現在の状況も重要視しますが、何よりも申請者の態度と責任感を注視します。単に「私は無実だ」ではなく、「このような状況になったが、私にも責任があり反省している」という姿勢を申立書で示すことが重要です。
避けるべき表現
申立書でよく見られる表現の中には、不要または誤解を招く可能性のある文もあります。下記の例のように誇張、感情的な表現、無責任な口調は絶対に避けるべきです。