契約書なしで働く場合のリスク
小規模な店舗や事業所で働く際、税金や雇用保険の問題を理由に、日雇いとして申告されたり、口頭で給料が決められることがよくあります。しかし、契約書が存在しない場合でも法的に保護を受ける方法は確かにあります。
非正規雇用でも保護されるのか
日雇いのように見えても、勤務実態が正規職員と似ている場合は、労働基準法による保護を受けることができます。契約書がないからといって、法的に労働者でないわけではありません。実際に週5日、1日6時間以上、決められた時間に継続して働いている場合、それは「常用労働者」と見なされ、雇用形態に関係なく、週休手当、有給休暇、退職金などの権利が発生します。
賃金未払いの対応方法
給料が決められた日に支払われない、または一部しか支払われていない場合、それは明確な「賃金未払い」です。この場合、退職前でも後でも労働基準監督署に申告することができます。退職後も3年以内であれば、賃金請求は可能です。
週休手当の含みについて
最低賃金に合わせて支給されるとしながら「週休手当を含む」と説明されることが多いですが、この文句だけで週休手当の支給が適法だと見るのは難しいです。週休手当が含まれているという明示的な根拠がなければ、基本給以外に別途支給されていなければ、それは未払い週休手当と見なされる可能性があります。週15時間以上勤務した場合には、必ず週休手当が支給されるべきです。
現金支給や個人名義口座への振込でも問題ないか
現金で受け取ったり、社長の個人口座に振り込まれた場合でも法的効力は有効です。ただし問題は証拠の確保です。入金履歴、メッセージのやり取り、出退勤時間の記録などは、賃金未払いの申告時に重要な証拠となります。特に「給料が遅れている」「○○日に働いた」などの内容を受け取ったものがあれば大いに役立ちます。
事業者登録者と実際の社長が異なる場合
実際に店舗に出ている人が社長のようで、お金もその人から受け取っているが、事業者登録は他の人の名義になっている場合もあります。この場合、法的な使用者責任は事業者登録された代表に帰属し、調査過程で実質的な指揮・監督関係が明らかになれば、実際の社長にも使用者責任が認められる可能性があります。
退職前後にすべきこと
もし辞めることを決心したなら、退職前に次の事項を準備する必要があります。まず、これまで働いた日付と時間を整理した記録表。次に、給料を受け取った履歴が確認できる銀行の振込履歴やメッセージ。最後に、食事代を含む給料か、週休手当がどのように処理されたのかについての説明が出てくる会話記録。退職理由をメッセージで残し「賃金未払いによる辞職」であることを明確に示すことが重要です。
賃金未払いの申告方法
賃金が遅れている、または適切に支払われていない場合、最も公式的で効果的な対応方法は、労働基準監督署に「賃金未払い申告書」を提出することです。この過程を通じて、国家機関が事業主に対して法的是正を要求し、必要に応じて刑事処罰手続きに進むこともあります。
労働基準監督署への申告方法
申告はオンライン、またはオフラインのどちらでも可能です。
オンライン申告:
- 労働基準監督署のウェブサイトで申告
- 政府ポータルサイトを通じて申告
- モバイルアプリからの一部機能も利用可能
オフライン訪問申告:
- 管轄の労働基準監督署に訪問して申告
- 訪問すると労働監督官と簡単な相談が受けられ、書類作成も手伝ってくれる
申告書作成時の注意事項
申告書には単に「給料を受け取れませんでした」という表現より、次のような項目を整理して記述するとより効果的です。
- 勤務期間: 例) 2024年3月1日から5月20日まで、週5日勤務
- 勤務時間: 例) 1日7時間、午前9時～午後4時
- 給料約定内容: 月175万円 + 食事代1万円/日、週休手当含むかどうか不明
- 受領内訳: 3月20万円、4月30万円など不規則に一部のみ受領
- 未払い金額総額: 予想300万円以上
- 証拠資料: 銀行振込明細書、出退勤時間の記録、メッセージのキャプチャなど
申告後の手続き
申告が受理されると、1～2週間以内に管轄の労働監督官が担当に割り当てられます。労働監督官は事業主に連絡して事実関係を調査し、賃金未払いが確認されれば、事業主に自主的な是正を要求します。事業主が応じない場合、是正指示書の発行や刑事告発の検討に進みます。この過程は通常2～6週間ほどかかります。
合意なしで終了した場合
事業主が支払いを拒否し続ける場合、刑事処罰（賃金未払い罪）の対象となります。労働者はその後、民事訴訟または未払い賃金を国家が代わりに支払う制度を通じて、未払い賃金を受け取ることができます。
契約書がなく、給料が遅れ、社長が複数いるなどの複雑な要素があっても決して諦めてはいけません。雇用形態に関係なく「労働者」として認められる条件は十分に存在し、その権利は自ら放棄しない限り守ることができます。重要なのは証拠を集め、退職前後の手続きを漏らさず進めることです。