資料辞典とは
資料辞典（Data Dictionary）は、データフローダイアグラム（DFD）に登場するデータを具体的に定義し記録するツールである。これによりデータの構造や属性、流れを体系的に管理することが可能である。このメタデータは、情報システムの設計と実装において非常に重要な役割を果たす。
資料辞典の必要性
資料辞典は、データ項目の意味、構造、形式、制約条件を文書化することで、開発者やユーザーが共通の理解を持つことを可能にする。例えば、「会員情報」というデータ項目がある場合、資料辞典ではこの項目がどのような属性（例：名前、連絡先、住所など）で構成されているか、どのような形式であるか、必須項目であるかどうかを明確にする。
資料辞典の記号解説
資料辞典では、データの構成と関係を表現するために、いくつかの記号が使用される。これらの記号はデータ構造の繰り返し、選択、省略を示し、データがどのように構成されているかを明確に伝える役割を果たす。
記号の意味
まず、= 記号は資料の定義を示し、どの要素がそのデータ項目を構成しているかを説明する。例えば、会員情報 = 名前 + 連絡先 と表記すると、「会員情報」は「名前」と「連絡先」で構成されることを意味する。
+ 記号はデータ項目間の論理的な接続を意味し、「そして(and)」を表す。一方、| 記号は選択を示す記号で「または(or)」の概念を表現する際に使用される。
[] 括弧は省略可能なデータを示し、そのデータ項目が選択的に存在し得ることを意味する。これはシステム実装時に入力値が必須ではないことを意味する。
繰り返しと注釈
繰り返し構造を示すために () 括弧内に繰り返し回数や範囲を示す形式を使用する。例えば、(1:n) はその項目が1回以上、最大n回まで繰り返され得ることを意味し、():m はm以上の繰り返しを示す。このような繰り返し構造の表現は、リスト型データや多重入力値がある項目を説明する際に有効である。
また、* 記号は注釈を示し、そのデータ項目に関する追加的な説明を記述する際に使用される。これによりデータの用途や制約条件などの補足説明を明確に伝えることができる。
資料辞典の活用
正確に作成された資料辞典は、システム開発の初期段階から大きな役割を果たす。データフローダイアグラムと共に使用すると、データの流れを視覚的に理解できるだけでなく、各データの構造を詳細に把握することができ、設計の完成度を高めることができる。また、複数の開発者やステークホルダーとの協業時に基準となる文書として活用され、保守時にデータ構造を再理解する際にも大きな助けとなる。
最終的に資料辞典は単なるリストではなく、システムのデータ構造を一目で把握し、統一された基準を維持するための重要なツールである。それをうまく活用することで、情報システムの品質と完成度が一層向上する。